日本三大御田植祭


日本三大御田植祭

「御田植祭」は、古くから寺や神社、皇室などが所有する領田(=御田)で、豊作を祈念する行事です。田植えを行ったり、地域の芸能などを加えたりします。中でも有名な、志摩の「磯部の御神田」、千葉の「香取神宮御田植祭」、大阪の「御田植神事」を、「日本三大御田植祭」としてご紹介しましょう。

磯部の御神田(いそべのおみた)

太古からの悠久の流れを感じる田植祭
太古からの悠久の流れを感じる田植祭

伊勢神宮の別宮である伊雑宮(いざわのみや)の御神田で、毎年6月に行われるのが「磯部の御神田」です。古代より受け継がれている神事であり、国指定重要無形民俗文化財です。

祭の見どころの一つが、勇壮な男達が大きな団扇のついた忌竹(いみだけ)を奪い合う「竹取神事」。この他、古式ゆかしい装束に身を包んだ太鼓打ちや簓摺(ささらすり)らによる田楽が響きわたる中、白い着物に赤いたすきがけをした早乙女たちによって厳かに行われる「御田植神事」、一の鳥居に向けて行われる「踊込み」と、勇壮かつ優雅な情景を繰り広げ多くの観光客を魅了します。

この神事が現在の形になったのは平安時代末期か鎌倉時代初めと伝えられており、太古より脈々と受け継がれてきた伝統と歴史の積み重ねから生まれた、荘厳(そうごん)な時代絵巻が繰り広げられます。

起源は、磯部に伝承される「鶴の穂落し」の故事に関わりがあるものとされています。言い伝えによれば、垂仁天皇の御代に倭姫命(やまとひめのみこと)が神宮の御贄(みにえ)地を求めて志摩の国を巡られた時、伊雑宮のあるこの地で一基(ひともと)で千穂にもなる立派な稲をくわえていた鶴に遭遇したという。これが稲作起源伝説として「竹取神事」や「刺鳥差舞」など独特の形に展開されたものと考えられています。


【磯部の御神田(伊雑宮御田植祭)データ】
会期と会場
6/24
伊雑宮
問い合わせ先
伊雑宮 三重県志摩市磯部町上之郷
伊雑宮御田植祭(志摩市観光協会)
磯部の御神田(志摩びとの会/志摩市役所内)


香取神宮御田植祭(かとりじんぐうおたうえさい)

古式ゆかしい「御田植祭」
古式ゆかしい「御田植祭」

香取神宮の春の「御田植祭」は、毎年4月に行われる重要な祭礼。1日目の「耕田式」と2日目の「田植式」からなります。

「耕田式」では、本殿前の境内を水田に見立てて、田を耕すための牛が鋤を曳く行事や 鍬入れ行事など(「鎌の儀」「鍬の儀」「耕田の儀」)を行います。また、花笠を背負った地元の少女達による田舞(たまい)や早乙女手代(てしろ)の植初(うえそめ)行事で五穀豊穣を願います。香取の春を感じる祭典です。
「田植式」は前日と同様、拝殿前にて露払・鍬取・老姥や華傘の稚児が庭上へ進み、少女の田舞の後、田植え歌によって早乙女手代が田植えの所作を行います。拝殿前の神事が終わると参道から斎田へと向かい、献餞、祝詞奏上などの神事が執り行われた後、早乙女手代が田植え歌を唄いながら斎田の田植えをします。

祭は、田植え歌を歌いながらの田植えなど、満開の桜の花が咲く中、古くからの風景が繰り広げられます。また、御稚児さんをはじめ様々な所役の行列は、時代絵巻から飛び出してきたかのようです。
室町時代の明徳年間(14世紀)には既に行われていたと伝えられています。


【香取神宮御田植祭データ】
会期と会場
4月第1土・日曜日
香取神宮
主な行事
土曜日〈耕田式〉
日曜日〈田植式〉
問い合わせ先
香取神宮 千葉県香取市香取1697
御田植祭田植式・耕田式(香取市商工観光課)

御田植神事(おたうえしんじ)

田植踊りや住吉踊りが奉じられる御田植神事
田植踊りや住吉踊りが奉じられる御田植神事

毎年6月に行われる住吉大社の「御田植神事」は、古より厳格に伝承されている神聖な行事です。神功皇后(3世紀頃?)が御田を作らせたのが始まりと伝えられています。鎌倉時代より受け継がれ、現在も当時のまま形を変えずに厳格に守られており、国指定重要無形民俗文化財でもあります。

植女や稚児など、行事に関わる人は、まずお祓いを受け、第一本宮で神事の奉告祭を行います。そして行列を整えて御田へ向かいます。その後、御神水を御田の四方に注ぎ清め、早苗の授受が行なわれます。舞台上においては巫女による「八乙女舞」、鎧兜が見事な「風流武者行事」、子供達による「田植踊り」、心の字をかたどって踊る「住吉踊り」などが披露され、見ている人を楽しませてくれます。なかでも住吉踊りは有名で、とてもかわいらしく和みます。その後、田植え歌を歌いながらの田植えとなります。

母なる大地に植付される苗には、強力な穀霊が宿るものとして考えられていました。田植えに際して音楽を奏で、歌をうたい踊りや舞を演じるのは、田や植付する苗に宿る穀物の力を増やすためです。穀物が豊かに育ち、稲穂が十分に実る秋を迎えるための儀式として、今でも厳かに行なわれています。
五穀豊穣を願っての田楽は全国各地にありますが、その中でもこの御田植神事は最も大規模で格式ある一つとされています。


【御田植神事データ】
会期と会場
6/14
住吉大社
問い合わせ先
住吉大社 大阪府大阪市住吉区住吉2-9-89
御田植神事(大阪観光情報)